弁護士事務所の業務範囲

弁護士事務所の業務範囲は、事務所規模によって大きく異なります。

4大事務所のような大手事務所では、基本的に業務範囲はフルメニューとなります。

所属弁護士が数百人規模になるため、業務範囲を広げても分業によってカバーできるわけです。

また、基本的に大手の弁護士事務所は大企業がクライアントのため、大企業が求める法律関連のサービスを全て提供しようとすると、どうしても業務範囲を広げざるをえないのでしょう。

もともと、大手の法律事務所は渉外事務所と呼ばれ、外国が関わるような案件を対象とする渉外業務で業績を伸ばしてきた事務所がほとんどです。

しかしながら、上記のような業務範囲のフルメニュー化の傾向を考えると、渉外事務所という言葉自体が死語になりつつあるのかもしれません。

一方、中小規模の法律事務所では、法人業務だけに特化している事務所はほとんどありません。

離婚や相続、交通事故や借金問題などの個人業務も受け付けています。

法人業務は債権回収や労務問題などを扱っていることが多いようです。

中小規模の法律事務所の場合、顧問契約で月○万円という形で関与していることが多いです。

そのため、大手の事務所と違って、法人関連業務は高単価にならないため、個人業務がメインになっていることがほとんどです。

このような事情があるため、大手事務所を辞めた若手弁護士が地方の弁護士事務所に就職する場合、ギャップにとまどうことがおおいようです。

つぶしのきく弁護士になるためには、離婚や相続などの個人相手の案件や、中小企業の労務問題・債権回収などの案件を数多く経験しておくことが重要となるでしょう。

 

なお、福岡などの中規模都市では、大規模事務所と小規模の事務所のハイブリッドのような感じで、個人と法人の両方に力を入れている事務所もあるようです。

会社のことだけでなく、個人のことも無料で相談できるのが人気の理由かもしれません。

福岡の弁護士事務所

弁護士会の入会金や会費は意外に負担

司法試験に受かった弁護士というと羽振りが良いイメージがあるかもしれませんが、最近ではそうでもありません。

司法改革によって弁護士の絶対数が増えているため、就職困難な弁護士も多いようです。

そのような若手の弁護士を苦しめる要因が弁護士会の入会金と会費です。

弁護士になるには、入会しようとする弁護士会を通じて、日本弁護士連合会(日弁連)の弁護士会名簿に登録しなければいけません。

つまり、全国に52カ所ある弁護士会の、どこかの弁護士会を通じてしか弁護士登録ができないわけです。

基本的に弁護士会は都道府県に1つですが、東京の場合は3会あり、入会の際は推薦者が必要となります。

弁護士会への入会金は弁護士会によってまちまちで、1万円~5万円程度になり、その地域の弁護士数が少ないと高めになるという傾向があります。

弁護士になってからも、会費の形で毎月一定額がかかり、日弁連会費、弁護士会費ともに年次が上がると高くなる仕組みになっています。

例えば、日弁連の会費は、修習終了後2年間は月額7000円で、3年目以降は月額14000円です。

このほか少年・刑事財政基金や弁護士過疎・偏在対策としての日弁連特別会費が年次に関わりなく4500円かかります。

弁護士会費の方は、例えば東京弁護士会の場合、

・司法修習終了から3年間は月額5000円
・4年目は1万円
・5年目は1万5000円
・6年目以降は1万8500円

となります。

これらの弁護士会費の負担の他にも、弁護士会館の建設負担金としての特別会費もあります。

このように弁護士会の入会金や会費は結構ばかにならない金額がかかります。

最近では若手の弁護士の負担を軽減しようという流れもあり、少しずつ負担が下げようという動きもあるようです。

弁護士の東京一極集中

弁護士業界に馴染みがない人だと、弁護士は全国にまんべんなく散らばっているイメージかもしれませんが、実際には東京に一極集中しています。

■そもそも弁護士会の分布はどうなってる?

東京の一極集中の話の前に、弁護士会の分布の話をしておきます。

弁護士会は、北海道に4つ東京に3つある他は全ての件に1つずつあります。

弁護士は所属している法律事務所の所在地の弁護士会に入会するので、東京に事務所を構えている弁護士が大阪の弁護士会に入会することはできないことになっています。

北海道も、札幌・函館・旭川・釧路の4つの弁護士会には、それぞれの地域で業務を行っている弁護士しか入会できません。

■東京の弁護士数が最も多い

これらの弁護士会のうち、最も弁護士数が多いのが東京です。

東京の3会(東京・第一東京・第二東京)だけで、全弁護士の半数近くの数になります。

逆に所属弁護士が少ない弁護士会もあり、函館や旭川、島根、鳥取などの弁護士会は人数が非常に少なくなっています。

■東京一極集中の弊害

このような弁護士の東京一極集中には弊害があります。

まず、東京においては、人口当たりの弁護士数が増えすぎ、競争が過密になりすぎることです。

東京は弁護士数が多いため、若手が事件を確保するのが他県に比べて困難です。

そのため、国選弁護事件の配転を巡って競争が起きるほど、競争が激化しています。

逆に、東京以外の地域では、弁護士過疎の地域があります。

東京都は逆に、近くにいる弁護士数が少ないため、弁護士間の競争が起こりにくく、サービスレベルが低かったり、弁護士へのアクセスが悪かったりするということが起こりやすいのです。

法的サービスの民主化のためにも、いびつな弁護士数の分布はどうにかしたいこところです。

独立するか事務所に残るか

一般的に弁護士は独立志向が強い傾向があります。

まず、ボス弁が率いる事務所に3~5年ぐらいの間勤務し、経験を積んだ後に独立することが多いようです。

3年以上弁護士事務所で勤務していれば、業務は一通り覚えることはできますし、事務所の顧客だけでなく自分の顧客もある程度ついてきます。

また、5年以上つとめてしまうと、事務所内で責任が重い立場になっていくので、独立しにくくなるという事情もあります。

さらに、ボス弁の側も、基本的にイソ弁の独立を前提としている所があり、卒業と採用のサイクルを繰り返す事務所が多かったわけです。

しかしながら、近年では弁護士の独立志向は急速に減退しています。

というのも、弁護士が増え、競争が激しくなっているので、独立するリスクが大きくなっているのと、最近の若手弁護士は法科大学院に通っていた際の奨学金の返済をしている人が多いことも独立をためらわせる要因の1つになっているようです。

結果、中小規模の弁護士事務所から大規模な事務所まで、全体的に事務所規模が拡大してきているわけです。

ただ、積極的に独立するケースではなく、やむをえず独立するケースは最近増えてきています。

修習終了後に、勤務する法律事務所が決まっていない場合、独立するしか道は残されていません。

同期の3人ぐらいの弁護士で集まって、経費共同の事務所を運営していることが多いようです。

しかしながら、若手の弁護士だけで集まって事務所を構えるのは、事件数が少ないため十分に、弁護士業務の経験を積めないというデメリットがあります。

増加しつつある弁護士法人

弁護士法人は、2002年の4月から設立が可能になりました。

従来、弁護士法人は2つ以上の場所で法律事務所を行うのを禁じられていました。

というのも、旧々法時代は、弁護士はいくつでも事務所を持てたため、複数事務所を開設し、弁護士以外の事務員に弁護士業務を担当させたり、弁護士でない人物に看板を貸していたりするということがあったからです。

しかし、弁護士法人にすると支店の設置が可能になります。

規模を拡大し、全国に支店を持ちたい弁護士にとっては、弁護士法人を活用することにメリットがあるわけです。

弁護士法人にするメリットとしては、弁護士個人として懲戒を受けた場合に、他の社員弁護士や勤務弁護士で業務を継続できるという点もあります。

また、弁護士が裁判官に任官する際には、弁護士登録を抹消しなければならず、その時点でもっている顧問契約も受任している事件の委任契約も解除しなければいけませんが、弁護士法人ならその必要がありません。

ただし、実際には、上記のような理由で法人化していることは少ないようです。

法人化した事務所の多くは、支店設置の必要性や意図もない、小規模の零細事務所が最も多かったようです。

このような弁護士事務所にとっては、法人化によって箔が付くというのが一番の動機だったのでしょう。